【この曲の目的について】
この曲は、学生や比較的経験の少ない社会人により結成された弦楽アンサンブル、もしくは管弦楽サークルの弦合奏練習曲として、過度な負荷を感じることなく、合奏の楽しさを味わえることを目的として作曲しました。
また、それぞれの楽器の持ち味を最大限に生かしつつ、難易度に関してはパート間で極力均一になるように配慮しました。普段セカンドバイオリンで演奏している方もファーストバイオリンに挑戦してみるのも良いでしょう。
【曲の構成とストーリーについて】
作曲者が道東地方を旅した思い出を曲にしました。
全体で8つのシーンから成る標題音楽です。一時的にイ短調に変わりますが、基本的に全体を通してイ長調でまとめた明るい曲になっています。
(1)オホーツクの夜明け(0'01"〜)
薄明で点々と続く野花がうっすらと見えてきて(Cb)、海のさざ波も聞こえてきます(Vn)。
(2)原生花園の風景(0'28"〜)
明るくなり、野花も遠くまで咲き続いています(Vc)。ハマナスもささやかに歌っているようです(2Vn)
(3)知床半島の遠景(1'14"〜)
美しい知床連山が海の向こうに見えてきました(Vc)。この知床のテーマは後でもう一度再現されます。
(4)キタキツネとの戯れ(1'46"〜)
キタキツネが寄ってきて、しばらく戯れました。残念ながらコンコンとは鳴いてくれませんでしたが、そんなイメージでpizzが入ります(1Vn)。
(5)ビグマへの恐怖心(2'03"〜)
知床の森を散策しました。森の中は薄暗く、肌寒く、ヒグマが出たら怖いなあという恐怖心で心臓の鼓動が大きくなります(Vc,Cv)。ここでイ短調に転調されます。
(6)森を抜ける(2'35"〜)
明かりが射したりまた暗くなったり。音楽もイ短調から徐々に#が増えてイ長調へ向かっていきます。
(7)滝のある知床の雄大な風景(2'58"〜)
視界が一気に広がり、知床連山(Vn)やフレペ滝(Va)の風景が、雄大に迫ってきます。まさに秘境です。
(8)虹がかかりエゾシカ親子も戯れる(3'18"〜)
雄大な自然に溶け込むかの如くエゾシカ親子が戯れ(2Vn)、滝には虹がかかります(62小節目〜Va)。感動で胸がドキドキしています(Cb)。
◆ パート別 演奏の手引き ◆
第1バイオリン
前半のpizzは可憐に咲く花や動物の鳴き声のイメージです。澄んだ音が必要になります。(7)〜(8)は息の長いフレーズになります。曲の中でも最大の魅せ場になります。
難所攻略としては、55小節目のスラーは、第5ポジションを使うとしっかりと正確な音程が取れると思います。
最後のPiu mossoは、音が高くメロディでもないので、通常では音が取りにくいですね。しかし、調整の相性が良いので、軽く押さえると簡単に音程が合います。
第2バイオリン
前作以上に第2バイオリンが重要となります。しかし、今回も全て第1ポジションで演奏可能です。
難所攻略としては、44小節目の#G⇒Aは、1の指でスライドさせても良いでしょう。Glissandに聞こえなければ大丈夫。
(7)以降は、解放弦で大丈夫な音とそうでない音がありますので、オリジナルのパート譜には運指を明示してあります。
ビオラ
ビオラも全て第1ポジションで演奏可能です。前作同様、独自の動きも多くなっていますので、主張すべき場所は明確な発音が必要になります。
難所攻略としては、指をどこでスライドさせるか、もしくはスライドさせずに演奏するかがフィンガリングのポイントです。
例えば、43小節目の最後2音は、音程の違いをはっきりと出したい為、スライドは避けた方が良いですね。54小節目の後半も、H⇒Aを2の指でスライドさせたほうが良いでしょう。62小節目の最後の音は中級者以上は2の指を使った方が良いでしょう。
チェロ
チェロは基本的に旋律が多くなります。高い音も求められますので、やはりフィンガリングが非常に重要になってきます。
難所攻略としては、(7)以降は、第1および第4ポジションだけでは少し難しいと思います。54小節目のように、3の指で押さ得ていた#Fを1の指に変えたり、4の指で押さえていたAの音を2に変えたりと工夫してみましょう。
コントラバス
前半のpizzはコントラバスの得意技だと思います。しかし、この曲には(8)という難所が登場します。正しいフィンガリングを使い、一音一音を正確に押さえると良いと思います。
難所攻略としては、前述通り(8)は難所です。解放弦を利用している時間で次の指を押さえる準備を効率よく行えば、このテンポでも弾けるかと思います。
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